各部の名称
まずは各部の名称について確認します.下記のRollerblade社製FUSIONをモデルに解説しますね.
ブーツ部とフレーム部
まずブーツは大きく分けてブーツ部とフレーム部に分かれます.ブーツ部は主に「履き心地」に影響し,フレーム部は主に「すべり心地」に影響しますが,本当はどちらも非常に重要な要素です.
ここではブーツ部とフレーム部に分けて説明していきます.
1.ブーツ部の各部の名称
ブーツ部はさらに分解できることが多く,履き心地などを調整する機能が付いているものもあります.一般的にブーツは「シェル部」と「カフ部」に分かれます.シェル部とは足の足首からつま先までを覆う部分で,カフ部はくるぶしよりも上を押さえる部分で,通常は前後に少し動かすことができます.
スピード用のレーシングブーツや,一部のフィットネス用ブーツでカフがシェル部と一体になっていたり,もしくはカフ自体が無いブーツもあります.
1.1 ハードブーツとソフトブーツ
ここで一般に,シェル部がプラスチック(もしくはカーボン)製のものを「ハードブーツ」,皮や合成皮革などでできているものを「ソフトブーツ」と呼びます.最近のものはソフトにフィットする部分とハードにサポートする部分を組み合わせたものも多く,一概にどちらとは言えないのが現状ですね.
ハードブーツ
ハードブーツは,硬くて足首の動きを制限されてしまいますが,滑走時に足首をサポートしてくれるために長時間滑っても疲れにくい長所があります.ただし,ハードブーツはプラスチック製のシェルの中にフカフカなクッションが付いている「インナー(もしくはライナーとも呼ぶ)」が入っていますが,足の形にあっていないと滑っているうちにくるぶしや小指の付け根などが痛くなることがあり,ブーツ選びが難しいです.
ソフトブーツ
一方,ソフトブーツは履き心地が非常に良いのが特徴です.長時間滑っても痛みを感じにくいのがソフトブーツの最大の長所です.また,足首を曲げやすく,スラロームなどの競技では一部ソフトブーツの熱狂的なファンが居ます.多くのソフトブーツはシェル自体がインナーと一体化しており,取り外すことができません.ただ,ソフトブーツは足首のサポートが少ないので,ブーツに極端に負担をかけるような滑走が難しいです.またハードブーツよりは寿命が短いように感じます.インナーがはずせないので洗濯できないのも欠点かな.
1.2 インナーとインソール
すべてのハードブーツと一部のソフトブーツにはインナー(ライナーとも呼ぶ)が入っています.
インナー
インナーはブーツの履き心地を大きく左右する要素で,かかと周りの固定感やタン(スネの部分)の柔軟性,生地のやわらかさやクッション性など,様々な要素があります.インナーは丸洗いができるものが多いので,ブーツを長持ちさせるためには定期的に洗濯するのがよいでしょう.フカフカ感もよみがえります.
インソール
インナーの中にはインソール(中敷き)が入っています.インソールも履き心地の上で非常に重要で,履き心地に関する多くの問題点がインソールの変更で解決したりします.スキーブーツのカスタマイズをしている店などではインソールを自分の足型に合わせてつくってくれることもあります.僕もカスタムインソールを使っていますが,非常に履き心地&すべり心地がいいです.これ無しには居られなくなります.
これがインソール.カスタムインソールです.僕の足が偏平足なのがわかる.
1.3 ブーツの装着方法
ブーツの装着装置は様々なものがありますが,代表的なもので以下の3つについて解説します.
バックル
バックルは最も一般的な装着装置です.スキーブーツにも付いていますよね.カチカチと段階的に閉めることができ,足をシッカリと固定できますが,足と当たる位置などによっては痛みを生じたりと一長一短です.
ベルクロストラップ
ベルクロストラップは,「ベルクロ」とか「マジックテープ」と呼ばれる小児用の靴によく使われるようなストラップで固定する装置です.これはシューレースよりも手軽に足を固定でき,またストラップ部の厚さや幅によって装着感が向上したりします.よく言えば万能ですが,バックルよりは強く固定できないので,中途半端な感じもします.
シューレース
シューレースは靴紐です.固定感を閉め方で調整したりできます.紐を結んで閉めたり,脱ぐときにいちいち緩めたりするのは非常に面倒ですが,履き心地を調整したり便利です.靴紐によっても閉め心地を調整できます.靴紐は断面の形状から大きく分けて「平紐」「丸紐」に分かれます.丸紐は紐穴(アイレットと呼ぶ)との間でよく滑るので,締めやすく,緩めやすい.平紐は反対に締め/緩めは難しいですがシッカリと締めることができます.
2.フレーム部
フレーム部はブーツとタイヤ(ウィール)をつなぐフレーム,ウィール(タイヤ),ヒールブレーキに分かれます.
2.1 フレーム
フレームはブーツのすべり心地を決定する大きな要素のひとつです.
フレームは「材質」「長さ」「装着可能ウィール」「ロッカリング」などで分類できます.
フレームの材料
フレームの材料はプラスチック(樹脂)か,金属(主にジュラルミン)に分かれます.金属のほうが重い反面,足で発生した力を効率よく伝えるため,スピードが出やすく,重さを補ってあまりある効果があります.
アグレッシブ用のブーツでは,グラインドと呼ばれる手すりなどの上をフレームを擦りながら滑るテクニックのために樹脂を使ったものがほとんどになりますが,多くのインラインスケーターは金属製のフレームを使っています.
フレームの長さ
フレームの長さは平均的なもので270mm程度で,短いもので220mm程度から,300mmを超えるものまであります.短いほうが旋回しやすい反面,滑走を安定させるのが難しいという特徴があります.初心者は270mm程度のものが平均的です.スラロームなどの競技をする場合は旋回性が重要ですから210mmから長くても250mm程度のものを選びます.スピード用は装着できるウィールの関係で270mmを超えたものを使うのがほとんどです.
ウィールの大きさ
装着できるウィールの大きさはフレームの長さとも関係があります.ウィールについては後のウィール解説の部分で説明します.
ロッカリング
ロッカリングとはフレームに装着しているウィールの前から1番目と4番目のウィールを地面から浮いた状態にすることです.
ロッカード状態などとも呼ばれ,旋回性が著しく増しますが,安定性は極端に下がります.
1番4番のウィールを直径で4mm程度小さくする方法でロッカリング状態を作る人が多いようです(ウィールロッカリングなどとも呼ぶ).ウィールロッカリングは,ウィール径の違うウィールを用意しなくてはならないほか,ウィールローテーションなどのメンテナンスがやりにくい問題があります.1番4番のウィールは減りやすいのですが,2番3番と入れ替えることができないのです.
ほかにいくつかのフレームではウィールを同じ径で使っていても,ロッカリング状態にすることができます.VIPERのSIDEWINDER MAMBA2のようにロッカリング状態に固定のものや,SKATECH2004フレームのようにロッカリング状態とフラット状態を選択できるフレームもあります.
1番のみをあげた状態にするなどのアレンジもあります.自分なりのセッティングを楽しむのもよいでしょう.初心者はフラットで・・・という意見もありますが,僕は初心者のころからロッカリングでした.最初はスラローム一本だったので.
逆に2番,3番のみをあげて,1番4番で設置する「アンチロッカリング状態」を作ることもあります.アンチロッカリング状態(アンチロッカーなどとも呼ぶ)では,極端に旋回性が落ち,滑走安定性が増します.多くのアグレッシブ用ブーツでは,ジャンプやハーフパイプ中の滑走など安定性が求められるためにアンチロッカリングになっています.また2番と3番の間のスポットと呼ばれるくぼんだ部分に手すり(レール)を滑らせる「グラインド」と呼ばれるテクニックのためにも2番3番を小さいものにしたり,もしくは外したりします.
2.2 ウィール
ウィールを選択する要素として大きなものに「大きさ(直径)」と「硬さ」があります.
ウィールの仕様をあらわす方法は「○○/△△A」となっており,○○が直径(mm),△△が硬さになっています.(例:
80/76A・・・直径80mm,硬さ76A)
ウィールの直径
直径については,フレームに装着できる最大直径に注意して選定します.小さすぎてもよくないです.
小さいウィールは車高が低くなるので安定性と旋回性が増します.一方で大きなウィールは路面の影響が少なくなるほか,同一のスピードでもベアリングの回転数を抑えられるので,高速で効率的な運転が可能です.スピード競技に向いています.
通常,ウィールの径は以下のような分類になっています.あくまでも参考ですが.
40-50mm : アグレッシブ用.アンチロック状態を作るために2番3番に入れるためのもの.回らないのでアグレッシブ以外の人は必要ない.
50mm-60mm : アグレッシブ用.ほとんどは90Aなど硬い樹脂製.安定性が非常に高い.
65mm-80mm : フィットネス・スラロームなど用.アスファルトの路面上での通常滑走に向いた大きさ.
90mm-110mm : フィットネス・スピード用.路面の影響を受けにくくスピードが出せるウィール.近年のフィットネス用ブーツは90mmのウィールを使うものも少なくない.100mm以上のウィールは安定性が非常に低くなり,またフレームも長くなるので扱いが少し難しい.
ウィールの硬さ
ウィールの硬さについても解説しておきます.ウィールの硬さは硬いほうが長持ちするがグリップしにくい.柔らかいほうがグリップしやすいが,すぐに減る,という傾向です.柔らかいウィールを炎天下で使ったりすると,一時間くらいで滑走感が変わることもあります.
90A-100A : アグレッシブ用.硬い.アスファルトでも滑らかな路面だとグリップしにくい.
80A-90A : フィットネス用.硬め.通常アスファルト路面では80Aくらいを使います.82Aくらいが一般的か.
72A-80A : フィットネス・室内ホッケー用.柔らかめ.アスファルトでもかなりツルツルの路面では柔らかいウィールを使ったほうがグリップしやすいです.
その他ウィールの選択ポイント
また,ウィールの選定で重要なのは「コア」もしくは「ハブ」と呼ばれる中心の硬質プラスチックの部分です.使用するベアリングが通常の「608」と呼ばれるタイプなのか,それとも「マイクロベアリング」と呼ばれる「668」というタイプなのかで使うウィールが変わります.通常は「608ベアリング対応」のもので,マイクロベアリング対応のものは最近では徐々に見られなくなってきました.
この部分はベアリングとの接続を担う部分ですので,精度によっては廻る・廻らないが変わってきます.外周のウレタン部分との接着方法によってもすべり味が変わります.この辺は使ってみないとわからないというのが現状です.
2.3 ベアリング
ベアリングも滑走感を変えてしまう大きな要素です.選定ポイントは「サイズ」「材質」「精度」「潤滑方式」です.
ベアリングのサイズ
サイズはウィールの部分でも触れましたが,通常の「608」と「668(マイクロベアリング)」の2種類があります.現在は608タイプが主流です.こちらを選んでおけば間違いは少ないでしょう.
ベアリングの材質
材質はいろいろと難しい問題があります.これには「ベアリングとは何なのか」について知っておいてもらう必要があるからです.
最近になって見られるようになったのは「セラミック製ベアリング」というヤツで,ベアリングの中に入っているボールがセラミックで出来ています.熱変形しないので高速で長時間使用しても滑走感が変わりませんが,衝撃に弱いのでアグレッシブなどには向きません.
ベアリングの精度
精度はいろいろな表示方法があって,「ABEC」「ILQ」「SG」などがあります.後に付く数字が高いほうが精度がよいということになります.ABECがもっとも一般的で,アメリカの工業規格なのですが,その他のILQやSGと一緒であまり当てになりません.同一メーカー内で精度が良いものが良いでしょうが,他のメーカーと比較するのは難しいです.
ベアリングに精度がいらないという話がありますが,実際はよいベアリングは減速しにくく,楽に滑走できるほか,滑走中の加速回数を少なくしてくれ,トリックなどに集中させてくれます.良いものは良いです.ただ規格があまり当てにならないのです.いろいろと試して見て,というところでしょうか.
ベアリングの潤滑方法
最後に潤滑方式です.「オイル」と「グリース」があります.グリースは固液混合状態の潤滑剤をベアリング内に充填してある方式で,グリース自体が外から入ってくるゴミを遮断してくれたり,潤滑剤の流出を防いでくれるので,メンテナンス回数を少なく出来ます.通常は1年くらいは持ち,それ以上使うとベアリング自体がダメになるので,普通はグリース潤滑のベアリングを買ったら,捨てるまでメンテナンスしません.
オイルベアリングはオイル潤滑で,グリースに比べるとオイルの流出やゴミの流入があるのでメンテナンスが必要になりますが,固液混合のグリースに比べて回転を邪魔しないオイルベアリングは,圧倒的な滑走感を提供します.
2.4 ヒールブレーキ
読んで字のごとく,ヒール(かかと)のブレーキです.
これはほとんどすべてのフィットネス用インラインスケートに付いている「減速装置」です.右足のつま先だけをあげて,かかとの4番ウィールのみで設置した状態にすると,地面にブレーキをこすり付けることが出来ると思います.
ただこれ,難しい.バチっととまるには結構練習が必要ですし,うまい人じゃないとあまりブレーキが利かない.
ヒールブレーキの利点は,Tストップなどのウィールをこすり付けて減速する方法に比べて,減るのはブレーキのみなので経済的という点です.ブレーキは1000円程度で購入できるものがほとんどですが,ウィールは両足で10000円近くするにもかかわらず,ブレーキでフラットなスポットができると滑走感が著しく悪化するからです.
スラロームなどの特殊な競技をする場合はヒールブレーキを外します.邪魔なだけです.アグレッシブブーツには最初から付いていません.
シティランをするときは付いているといいでしょうね.ブレーキをする機会が多いので.「Tストップかヒールブレーキか?」という論争がたまに起きますが,僕はヒールブレーキ派.なぜなら「経済的」だからです.ブレーキングとしては一長一短ですが,ヒールブレーキがあってもTストップなどは可能ですから.














